業務ヒアリングの進め方と質問リスト|現状の業務を正しく聞き出す方法

担当者に業務を聞いて図にしたのに、見せたら「実際は違う」と言われた。質問が思いつかず、担当者の話を聞くだけで終わってしまった。業務の可視化で最初につまずくのは、作図ではなくヒアリングです。
ヒアリングで取れる情報の質は、質問の順番と、聞いた内容をその日のうちに起こすかどうかで決まります。この記事では、準備、5つの群に分けた質問リスト、当日の進め方、記録から本人確認までの流れを書いています。
この記事で分かるのは、1人45〜60分のヒアリングで、業務フロー図を描くのに必要な情報(時系列の手順、判断の分かれ目、例外、件数と時間)を取り切る手順です。
ヒアリングの目的と、取るべき情報
現状把握のヒアリングの目的は、担当者の頭の中にある「実際の手順」を、第三者が図に描ける形で取り出すことです。改善案を聞く場ではありません。改善案を先に聞くと、担当者は現状を省略して話し始めます。
業務フロー図を描くために、次の4つの情報が必要です。この4つが取れていれば、ヒアリングは成功です。
- 時系列の手順。開始の合図から終了まで、何を、どの順番で行うか。
- 判断の分かれ目。どこで何を基準に判断し、結果によって手順がどう分かれるか。
- 例外と困りごと。普段の手順から外れるのはどんな場合で、月に何件くらいあるか。
- 件数と時間。月あたりの件数、1件にかかる時間、待ち時間、差し戻しの回数。
準備:資料・対象者・時間の3つを決める
資料を先に集める
既存の手順書、使っている帳票、システムの画面を集めて目を通します。帳票とシステムの画面は、作業の区切りと入力項目を示します。ヒアリングでは「この帳票はどの段階で作りますか」と、資料を指しながら聞けるようになります。
対象者は「実務の担当者」と「判断する人」の両方
実務を毎日行っている担当者からは、手順と例外が取れます。承認や判断をしている管理職からは、判断の基準が取れます。片方だけに聞くと、図に判断の分かれ目が入らないか、手順が粗くなります。部署をまたぐ業務では、受け渡しの両側の担当者に聞きます。
時間は1人45〜60分、録音の許可を取る
1人あたり45〜60分を目安に確保します。この記事の質問リストを一通り聞くのに、その程度の時間がかかるためです。90分を超えそうな場合は、2回に分けます。会話を録音するか、メモ役を1人同席させます。録音は、本人に目的(記録を起こすため)と保管方法を伝えて許可を得てから行います。

質問リスト:5つの群で聞く
質問は、時系列の手順、判断、例外、数量、困りごとの5つの群に分けて、この順番で聞きます。手順を先に聞く理由は、手順が分かってからでないと、判断と例外の位置が決まらないためです。
群1. 時系列の手順
- この業務は、何が起きたら始まりますか。メール、電話、システムの通知、カレンダーの日付など、開始の合図を教えてください。
- 最初に行うことは何ですか。その次は何ですか。(終了まで繰り返す)
- その作業で使う帳票やシステムの画面はどれですか。
- その作業の結果は、誰に、どの手段で渡しますか。
- この業務は、何が終わったら完了ですか。
群2. 判断の分かれ目
- 途中で「どちらにするか」を決める場面はありますか。それはどの作業の直後ですか。
- その判断は、何を見て決めますか。金額、取引先、納期、在庫など、基準を教えてください。
- 判断の結果によって、その後の手順はどう変わりますか。
- 自分で決められない場合、誰に確認しますか。確認にはどのくらい時間がかかりますか。
群3. 例外
- 普段の手順通りにいかないのは、どんな場合ですか。直近の例を1つ教えてください。
- その場合はどう対応しますか。誰が決めますか。
- その例外は、月に何件くらい起きますか。
群4. 件数と時間
- この業務は、月に何件くらいありますか。多い時期と少ない時期はありますか。
- 1件を終えるのに、作業している時間はどのくらいですか。待っている時間はどのくらいですか。
- 差し戻しや、やり直しは、月に何件くらいありますか。原因で多いのは何ですか。
群5. 困りごと
- この業務で、時間がかかって困っている作業はどれですか。
- 自分がいないと止まる作業はありますか。
- 本当は必要ないと感じている作業はありますか。
群5は最後に聞きます。先に聞くと、担当者は困りごとの説明に時間を使い、手順の説明が粗くなります。手順を一通り話した後の方が、困りごとが具体的に出ます。
当日の進め方と、記録から確認までの流れ
冒頭で、目的(業務の流れを図にすること)と、改善案を評価する場ではないことを伝えます。担当者は「自分の仕事を否定されるのではないか」と身構えることがあります。「実際にやっている通りに教えてください。規程と違っていて構いません」と最初に言います。
聞いている間は、担当者の話を遮らず、手順の抜けに気づいたら「その前に何かありますか」と戻します。専門用語や社内の略語が出たら、その場で意味を確認します。後から調べると、別の意味に取り違えることがあります。
終わったら、その日のうちに記録を起こします。翌日以降に回すと、前後関係の記憶が曖昧になります。記録は、時系列の手順を箇条書きにし、判断と例外を手順の該当箇所に差し込み、数量を各手順の横に書く形にします。この記録をもとに業務フロー図を描き、2〜3日以内に本人に見せます。見せるときは「違う箇所はどこですか」と聞きます。差分を直した版を、合意済みの第1版にします。
聞き出しにくい内容の扱い
個人の工夫や、非公式の手順
担当者が自分で作った Excel やメモは、規程にないため話に出てきにくい情報です。「自分用に作っているファイルや、覚え書きはありますか」と直接聞きます。これらは属人化の実態を示す、最も重要な情報です。
「やらなくていいと思っている作業」
担当者は、無駄だと思っている作業でも、上司の前では言いにくいことがあります。管理職と実務担当者のヒアリングは別々に行い、実務担当者には「この記録は改善の検討にだけ使います」と伝えます。
数量が「分からない」と言われたとき
正確な数字を求めると、担当者は答えられません。「多い月と少ない月で、それぞれ何件くらいですか」「1件で、短いときと長いときはどのくらいですか」と幅で聞き、見積もりであることを記録に注記します。概算でも、改善の優先順位を決めるには十分です。

記録と整理に AI を使う
総務省の令和8年版情報通信白書によると、日本企業で生成 AI を業務に使っている類型のうち、最も多いのは「議事録・メール作成補助」で約7割でした。導入効果を実感すると答えた割合も、この類型が約7割で、他の類型より高くなっています。ヒアリングの録音から記録を起こす作業は、この用途にあたります。
ヒアリングそのものを AI が行う方法もあります。ProcessAI は、担当者が AI と日本語で会話した内容(一般的な業務で20〜30分が目安)から、業務フロー図の初稿を生成します。担当者の都合の良い時間に1人で行えるため、日程調整の時間を省けます。生成された初稿は、この記事の「図に描いて本人に見せる」工程に使えます。件数や例外など、初稿に足りない情報は担当者が確認して補います。

ヒアリングの日程調整と記録の起こしに時間を取られている場合は、AI がヒアリングを行う ProcessAI をご検討ください。担当者が AI と会話した内容から、業務フロー図の初稿を生成します。
よくある質問
- ヒアリングの対象者は何人くらい必要ですか。
- 1つの業務について、関わる部署ごとに実務担当者1人と、判断や承認をする管理職1人が目安です。3部署が関わる業務なら、4〜6人になります。
- ヒアリングを1回で終わらせることはできますか。
- 本人確認の工程を入れると、最低2回の接点が必要です。1回目で聞き、図に描いたものを2回目(メールでも可)で確認します。1回で終わらせようとすると、実態と違う図になります。
- 担当者が忙しくて時間を取ってもらえません。
- 45分を2回に分けるか、群1と群2だけを先に聞いて図を描き、確認のときに群3以降を聞く方法があります。または、担当者の都合の良い時間に1人で行える AI ヒアリングを使う方法もあります。
- アンケートで代用できますか。
- 数量(群4)はアンケートでも取れます。手順と判断と例外は、話の流れの中で前後関係を確認する必要があるため、アンケートでは抜けが多くなります。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)