BPO受託前の業務整理|フロー・分担・未確認事項のまとめ方

顧客から「この業務を外に出したい」と相談を受け、2週間で提案と見積もりを出すことになった。顧客の手順書は古く、担当者の話と食い違う。例外がどれだけあるか分からないまま、人数と単価を決めなければならない。この記事は、BPO 事業者が受託前に顧客の業務を整理し、提案の前提をそろえるための進め方を書いています。BPO に委託する側ではなく、受託する側に向けた内容です。
自治体の窓口業務の委託仕様書は、受託側と発注側で何を決めるかの具体例です。横須賀市のマイナンバーカードセンター窓口業務の委託仕様書では、業務ごとに受託側(仕様書では【委】)と市のどちらが担当するかを一覧にし、受託側に業務マニュアルとフロー図の作成、サービス水準を評価する指標の作成と検証を求めています。民間の受託でも、決める項目の構成は参考になると編集部は見ています。
この記事で分かるのは、受託前に決めることと残すこと、提案期限から逆算した資料と確認相手のそろえ方、通常処理・例外・繁閑差の確かめ方、顧客と受託側の分担と判断の戻し先をフローにする方法、未確認事項を見積もりの前提として管理する方法です。
受託前の業務整理で決めること、残すこと
受託前の整理の目的は、提案と見積もりの前提をそろえることです。業務のすべてを把握することではありません。期限内に決めるのは次の4つで、決められなかったことは「未確認事項」として残します。
- 範囲。何が起きたら受託側の作業が始まり、何を顧客に渡したら終わるか。開始と終了の事象で決めます。
- 分担。工程ごとに、顧客側と受託側のどちらが行うか。顧客に残る工程(承認・最終判断・顧客への連絡)を明示します。
- 判断の戻し先。受託側で判断できない案件を、顧客の誰に、どの手段で、どのくらいの時間で戻すか。
- 数量。月あたりの件数、繁忙期の件数、1件あたりの時間の目安。見積もりの根拠になります。
デジタル庁は、自治体の窓口 DX について、システム導入だけでは不十分で、バックヤードも含めた業務改革が重要だと説明しています。業務改革を行わずにシステムを入れると、かえって手続が複雑になり、職員側の業務が増える可能性があるとしています。受託側も同じで、受付の工程だけを見て引き受けると、後工程の差し戻しや確認で見積もりが崩れます。受付から完了までを通して見ます。
提案期限から逆算して、資料と確認相手をそろえる
提案期限が2週間なら、顧客との確認会の日を最初の3日以内と、最終週の初めの2回、先に押さえます。確認会の日が決まっていないと、資料の確認待ちで期限が尽きます。
顧客に依頼する資料は、手順書、使っている帳票(サンプル実物)、システムの画面、直近3か月の件数データの4点です。手順書は古いことが多いので、「現在と違う箇所に印を付けてください」と添えて依頼します。
確認相手は、実務の担当者、判断や承認をしている管理職、発注の窓口担当の3者です。実務担当者からは手順と例外、管理職からは判断の基準、窓口担当からは範囲と期限の希望が取れます。聞き方は業務ヒアリングの進め方と質問リストの5つの群がそのまま使えます。

通常処理・例外・繁閑差を、顧客と確かめる
通常処理は、1件の依頼が届いてから完了するまでを時系列で聞き、帳票サンプルを指しながら「この書類はどの段階で作りますか」と確かめます。手順書の記述と担当者の説明が違う箇所は、どちらが現在の手順かを管理職に確かめます。
例外は、「普段の手順どおりにいかないのはどんな場合ですか」と聞き、直近の実例を2〜3件出してもらいます。実例ごとに、誰が判断し、どのくらい時間がかかったかを聞きます。月に何件あるかは、幅(少ない月と多い月)で聞きます。例外の件数と処理時間は、見積もりで最も外れやすい項目です。
繁閑差は、月内の山(月末・締め日)と、年内の山(決算期・繁忙期)の両方を聞きます。件数データがあれば、月別・日別の件数を見て確かめます。平均の件数で人数を決めると、山の時期に処理が遅れます。

顧客と受託側の分担と、判断の戻し先をフローにする
聞いた内容は、顧客と受託側の2本のレーンに分けたフロー図にします。受託側のレーンに通常処理を描き、判断が必要な案件は顧客のレーンに戻す矢印を描きます。範囲の外にある工程と、確認できなかった工程は、図の中に「対象外」「未確認」と書いて区別します。
横須賀市の仕様書では、業務ごとに受託側(【委】)と市(【市】)の担当を一覧にし、両者が関わる工程は「【委】/【市】」と表記しています。受託前のフロー図も、同じように工程ごとの担当を一覧にすると、提案書の分担表にそのまま使えます。図は顧客に見せて「違う箇所はどこですか」と聞き、差分を直したものを提案の前提にします。
推測を確定事項にしない:未確認事項と見積もりの前提を管理する
期限内に確認できなかったことは、推測で埋めずに未確認事項の一覧にします。一覧の項目は、内容、見積もりへの影響(人数・単価・納期のどれに効くか)、確認相手、確認期限の4つです。提案書には「この見積もりは次の前提に基づく」として、未確認事項を明記します。
横須賀市の仕様書は、受託側にサービス水準を評価する指標の作成と、実績のモニタリング、指標の検証を求めています。民間の受託でも、受託前に「何を測って水準とするか」(処理期限内の完了率、差し戻し率、問い合わせ応答時間など)を決めておくと、受託後の評価で揉めません。測る項目は、受託前に顧客と合意します。
複数の業務を短い期間で整理する必要がある場合、ヒアリングと初稿の作図を AI に任せる方法があります。ProcessAI は、顧客の担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から業務フロー図の初稿を生成します。受託側の担当者は、初稿を顧客に見せて差分を確かめる工程から始められます。

受託前に複数の業務フローを短期間で整理したい場合は、ProcessAI をご検討ください。顧客の担当者が AI と会話するだけで初稿ができ、受託側は確認と提案に時間を使えます。
よくある質問
- 顧客が手順書を出してくれない場合はどうしますか。
- 帳票のサンプルとシステムの画面だけでも進められます。帳票とシステムの画面は作業の区切りを示すので、それを指しながら担当者に手順を聞きます。手順書がないこと自体を未確認事項に記録し、見積もりの前提に書きます。
- 例外の件数が分からないまま見積もりを出してよいですか。
- 幅で見積もります。例外が少ない場合と多い場合の2案を出し、「例外の件数が月○件を超える場合は再見積もり」と前提に書きます。推測で1つの数字に決めると、受託後に赤字になります。
- 自治体の仕様書を民間の受託の参考にしてよいですか。
- 決める項目(分担表・マニュアルとフロー図・サービス水準の指標)の参考にはなります。ただし、自治体固有の分担や法令上の制約はそのまま当てはまりません。項目の構成だけを参考にしてください。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)