業務量調査のやり方|工数・件数・待ち時間の測り方

「この業務にどれだけ時間がかかっているか」を聞かれて、担当者の感覚でしか答えられない。改善の優先順位を決めるにも、自動化の効果を見積もるにも数字が要るが、どう測ればよいか分からない。件数と時間を測り、集計して使える数字にするまでの手順を、順に説明します。
郡山市は、2015年度に全職員を対象とした業務量調査を始め、その後も年度ごとに調査を続けて結果報告書を公開しています。10年間の継続で、全庁共通業務(庶務事務など)の割合は当初の14.0%から10.0%未満に下がったと公表しています。同じ方法で測り続けると、どこを減らせたかが数字で分かります。
この記事で分かるのは、業務量・工数・経過時間・待ち時間の違い、調査の目的と期間の決め方、自己記録・観察・システムのログの使い分け、同時作業・手戻り・例外を含む集計の仕方、調査の負担と集計ミスを減らす体制です。
業務量・工数・経過時間・待ち時間を区別する
調査の前に、測る対象の言葉をそろえます。言葉が混ざったまま測ると、集計の段階で足し合わせられない数字になります。
- 業務量は、一定期間の件数です。「月に120件」のように数えます。
- 工数は、人が手を動かしている時間の合計です。「1件あたり20分」「月に40時間」のように、人の時間で数えます。
- 経過時間は、1件の処理が始まってから終わるまでの時間です。待ち時間を含みます。
- 待ち時間は、経過時間のうち、誰も手を動かしていない時間です。承認待ち、他部署からの回答待ち、システムの処理待ちなどです。
改善の効果を金額で示すときに使うのは工数です。経過時間を人件費に換算すると、待ち時間まで費用に入ってしまい、過大な数字になります。待ち時間は、納期の短縮や顧客対応の速さを示すときに使います。この計算例では、待っている間に担当者は別の業務に移れるものとしています。機械の監視のように担当者がその場を離れられない時間は、待ち時間ではなく拘束時間として別に記録し、工数に含めるかを決めます。
調査の目的と対象期間を決める:通常期と繁忙期
調査の目的を1つに決めます。「改善の対象を選ぶ」なら、部署の全業務について工数の概算を取ります。「自動化の効果を見積もる」なら、対象の1業務について1件あたりの工数と件数を正確に取ります。目的が違えば、測る粒度と期間が違います。
対象期間は、通常期と繁忙期の両方を含めます。通常期だけを測ると、月末や決算期の山が数字に出ません。短期の調査なら、1回の記録期間は最長2週間にし、通常期の2週間と、締め日を含む繁忙期の1週間を別々に行います。郡山市のように年度単位で続ける調査と、改善の前後で行う短期の調査では、目的も期間も違います。自治体の年間調査の方法を、そのまま企業の2週間の調査に当てはめないでください。
測る項目は、業務ごとに「件数」「1件あたりの作業時間」「経過時間」「手戻りの件数」の4つに絞ります。項目を増やすと、記録する担当者の負担が増え、記録の精度が落ちます。
自己記録・観察・システムのログを使い分ける
測り方は3つあり、業務の性質で使い分けます。1つの業務に2つの方法を組み合わせると、精度が上がります。
- 自己記録は、担当者が作業ごとに開始と終了の時刻を記録する方法です。費用がかからず、全業務に使えます。記録の手間で精度が落ちるので、1日1回、その日の件数と合計時間を書く形にすると続きます。
- 観察は、第三者が担当者の横で作業を見て時間を測る方法です。精度は高いですが、観察者の時間がかかります。件数が多く、自動化の候補になっている業務に限って使います。
- システムのログは、入力日時や承認日時がシステムに残っている場合に使います。記録された時刻の間の経過時間が正確に取れます。ただし、その間のどこが作業でどこが待ちかはログだけでは分かりません。待ち時間を分けるには、作業の開始と終了の記録か、観察を組み合わせます。

件数と時間を集計する:同時作業・手戻り・例外の扱い
集計は、業務ごとに「件数 × 1件あたりの作業時間 = 月の工数」を出し、部署の合計と比べて割合を付けます。割合が大きい業務が、改善の候補です。集計で迷いやすいのは次の3つで、扱いを先に決めておきます。
- 同時作業。電話を受けながら入力する、のように2つの業務を同時に行っている時間は、主な方の業務に付けます。両方に付けると、合計が実際の時間を超えます。
- 手戻り。差し戻されてやり直した時間は、元の業務の工数に含めず、「手戻り」の欄に分けて記録します。手戻りの時間は、改善で最も減らしやすい部分です。
- 例外。普段の手順と違う処理にかかった時間も、別の欄に記録します。例外の件数と時間が分かると、例外を減らす価値が数字で示せます。
通常処理・手戻り・例外の時間は、別々に記録したうえで、3つを足して総工数を出します。別々に記録するのは、どこを減らせるかを見るためで、総工数から外すためではありません。集計の結果には、測定の条件を添えます。期間、対象者の人数、自己記録か観察か、繁忙期を含むかを書きます。条件がない数字は、改善後に同じ条件で測り直せず、効果を比べられません。

調査の負担と集計ミスを減らす体制
調査は、担当者にとっては本来の業務に上乗せされる作業です。負担を減らすために、1回の記録期間は2週間を上限にし、記録は1日1回にし、記録用の表は1枚にします。記録の目的が「人の評価」ではなく「業務の改善」であることを、開始前に全員へ伝えます。評価に使われると思われると、記録が実態より短くなります。
集計は、記録した本人ではなく、部門のタスクフォースの1人が担当します。集計者は、記録の抜けや桁の誤りを見つけたら、本人に確かめてから直します。集計した結果は、改善前の数字として残し、改善後に同じ条件で測って比べます。比べ方は業務改善の効果測定で扱っています。
ProcessAI は、担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から業務フロー図の初稿を作り、工程ごとの削減時間の試算を出します。試算は担当者の見積もりに基づく目安です。正確な工数が必要な業務は、この記事の方法で測った数字に置き換えてください。

調査の前に業務の全体像と工程を把握したい場合は、ProcessAI をご検討ください。担当者が AI と会話するだけで業務フロー図の初稿と、工程ごとの削減時間の試算が出ます。
よくある質問
- 担当者の自己記録は信用できますか。
- 傾向をつかむには十分です。正確さが必要な業務(自動化の候補など)は、観察かシステムのログと組み合わせます。記録が人の評価に使われないことを伝えると、記録の精度が上がります。
- 調査の期間はどのくらいが適切ですか。
- 短期の調査なら、1回の記録期間は最長2週間とし、通常期の2週間と締め日を含む繁忙期の1週間を別々に行うのが目安です。1回の期間が2週間を超えると、記録の負担で精度が落ちます。年度ごとの継続調査は、目的も方法も別に設計します。
- 待ち時間も人件費に換算してよいですか。
- 原則として換算しません。待っている間に担当者が別の業務に移れるなら、その時間は人件費の削減額には入れません。担当者がその場を離れられない拘束時間は、別に記録して扱いを決めます。待ち時間の短縮は、納期や顧客対応の速さの改善として別に示します。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)