BPR(業務改革)の進め方 2026年版|6つの手順のどこにAIを入れるか

「来期は BPR に取り組む」と決まったが、何から始めて、どこで AI を使えばよいのかが決まっていない。BPR(業務改革)は1990年代に提唱された考え方です。この記事では、その手順を6つに整理し、AI を入れる箇所を示します。AI で変わったのは、現状の可視化と分析にかかる時間です。
IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」では、何らかの形で DX に取り組む日本企業は77.8%(2024年度)に達した一方、DX の目的に対して「成果が出ている」と答えた企業は6割弱で、米国とドイツの8割以上と差があります。取り組んではいるが、成果が出ているかを追えていない企業が多いことを、IPA は課題として挙げています。
この記事では、BPR と業務改善・DX の違い、6つの手順、AI を入れる4つの工程と人が決める2つの工程、失敗パターン、効果の測り方、推進の体制を扱います。
BPR とは:業務改善・DX との違い
BPR(Business Process Reengineering、業務改革)は、業務の流れを「今の手順を前提にせず」作り直すことです。現行の手順の中で無駄を減らす業務改善と違い、「この工程はそもそも必要か」「担当の分け方を変えられないか」まで問い直します。
DX との違いは、目的の置き方にあります。中小企業庁の2025年版中小企業白書は、デジタル化の段階4を「デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態」、段階3を「デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態」(例として業務フローの見直し)と定義しています。白書は BPR という語を使っていませんが、編集部は、BPR が扱う業務フローの見直しは段階3に、DX は段階4にあたると整理しています。業務の流れが整理されていない状態でビジネスモデルを変えようとしても、現場が回りません。
BPR の6つの手順
- 対象業務の選定。件数が多く、担当者が複数いて、残業や差し戻しが集中している業務を1つ選びます。経営上の優先順位で決める工程です。
- 現状の可視化。担当者にヒアリングし、業務フロー図と工程ごとの数量(件数・時間・待ち時間・差し戻し)を記録します。進め方は業務の可視化とはで扱っています。
- 課題の分析。数量をもとに、時間がかかる工程、待ちが発生する工程、差し戻しが多い工程、担当者が代わると止まる工程を特定します。
- 改善案の設計。工程の廃止・統合・順序の変更・自動化を組み合わせ、新しい流れを描きます。改善案ごとに、削減できる時間と必要な費用を見積もります。
- 実行。新しい流れに合わせて、担当・帳票・システム・規程を変更し、関係者に周知します。現場の合意を取る工程で、最も時間がかかります。
- 効果の測定。可視化で記録した数量を「改善前」とし、改善後に同じ項目を測って比べます。
AI を入れる4つの工程と、人が決める2つの工程
総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成 AI の活用方針を把握している日本企業のうち、何らかの業務で生成 AI を利用している割合は86.4%(2025年度調査)でした。一方で、令和7年版の同白書では、生成 AI 導入の懸念として「効果的な活用方法がわからない」が最も多く挙げられていました。BPR の手順に当てはめると、AI が効く工程は次の4つです。
現状の可視化:ヒアリングと作図
ヒアリングの録音から手順を起こす作業と、起こした手順を図にする作業は、生成 AI の得意な文章と構造の整理にあたります。AI がヒアリングそのものを行うツールもあります。ProcessAI は、担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から、業務フロー図の初稿を生成します。人が行うヒアリングの日程調整と記録を起こす時間を省けます。

課題の分析:数量の集計と候補の抽出
工程ごとの数量を集計し、時間と差し戻しの多い工程を候補として並べる作業は、AI に任せられます。ただし、候補のうちどれを課題として扱うかは、現場の事情を知る人が決めます。
改善案の設計:自動化候補の列挙と試算
可視化した工程のうち、入力と出力が定型で、判断基準を言葉にできる工程は、自動化の候補です。AI はこの候補を列挙し、削減時間とコスト削減額の試算を出せます。試算は目安であり、効果を保証するものではありません。実行の前に、1工程で試して数字を確かめます。
効果の測定:改善前後の比較
改善前と改善後の数量を同じ形式の表にまとめ、差を出す作業です。測定の項目を可視化の時点でそろえておけば、AI に比較表を作らせるだけで済みます。
人が決める2つの工程:対象の選定と実行
対象業務の選定は、経営の優先順位と現場の協力を得られるかで決まります。実行は、担当の変更や規程の改定を伴い、現場の合意が要ります。この2つは AI では代替できません。AI を入れる狙いは、この2つの工程に人の時間を回すことです。
AI ツールは、いきなり全社に導入するのではなく、まず1業務の可視化で試します。試した結果を見て、分析と設計にも広げます。「効果的な活用方法がわからない」という懸念は、自社の業務で小さく試すことで解消できます。

よくある失敗
現状の可視化を飛ばして、理想の流れを描く
現状が記録されていないと、改善案が実態に合わず、実行の段階で現場から反対されます。改善前の数量がないため、効果も測れません。IPA の調査で日本企業に「成果が出ているか分からない」が多いのは、この飛ばしが一因と考えられます。
ツールの導入が目的になる
「RPA を入れる」「生成 AI を入れる」が先に決まり、どの工程に使うかが後回しになる状態です。ツールは改善案の一部であり、工程を特定してから選びます。
全社を一斉に対象にする
可視化の日程調整だけで数か月かかり、途中で止まります。1業務を2〜4週間で区切り、終わった業務から実行に移します。
効果を測らない
実行して終わりにすると、次の業務に取り組む根拠がなくなります。改善前の数量を残し、改善後3か月で同じ項目を測ります。
推進の体制と、外部支援の使い方
経営層に近い旗振り役を1人置き、対象部門ごとに2〜3人のタスクフォースを作ります。タスクフォースには、実務の担当者と判断の権限を持つ管理職の両方を入れます。推進役を1人置くだけでは、部門の合意が取れずに止まります。
社内に進め方を知る人がいない最初の1業務は、外部の支援を受けると立ち上がりが速くなります。ただし、現状の可視化と改善案の合意は、社内の担当者が行う必要があります。外部に設計から任せる場合でも、改善前の数量と業務フロー図は社内に残し、2業務目以降を社内で回せる形にすることを目標にします。

BPR の最初の工程である可視化を AI で短縮したい場合は、ProcessAI をご検討ください。AI ヒアリングから業務フロー図の初稿、自動化候補と削減時間の試算までを出力します。
よくある質問
- BPR と DX は何が違いますか。
- BPR は業務の流れを作り直すことで、DX はデジタル技術でビジネスモデルや価値の出し方を変えることです。中小企業白書の段階に当てはめると、編集部は BPR を段階3(業務効率化・業務フローの見直し)、DX を段階4(ビジネスモデルの変革)に対応すると整理しています。BPR が DX の土台です。
- BPR にはどのくらいの期間がかかりますか。
- 1業務について、可視化から改善案の合意まで2〜4週間、実行に1〜3か月、効果測定に3か月が目安です。全社の業務を順に進める場合は、1年以上の計画になります。
- 中小企業でも BPR は必要ですか。
- 必要です。2025年版の中小企業白書では、業務フローの見直しを含む段階3に進んだ事業者は、段階2に比べて、コスト面・人材面の効果を感じている割合が20ポイント以上高くなっています。
- AI ツールだけで BPR を完結できますか。
- できません。対象業務の選定と、改善案の実行(担当・規程・システムの変更と現場の合意)は、人が行う工程です。AI は可視化・分析・設計・測定の作業時間を縮めるために使います。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)