RPA導入前の業務標準化|定型処理と例外の分け方

RPA を入れたが、例外のたびに止まり、結局人が直している。「自動化の前に業務を標準化しろ」と言われるが、すべての例外をなくすことはできない。この記事は、標準化する範囲と人に戻す範囲を決めて、自動化を試せる状態にするための手順を書いています。
2023年版の小規模企業白書の事例では、金属製品製造業のJマテ.カッパープロダクツ(新潟県上越市・従業員300名)が、RPA 導入の前に受注業務の棚卸しと改善を行ったと紹介されています。基本業務と不規則な業務に分けて全体像を把握したところ、チェック項目の未整備や作業者の判断によって42の工程が発生していたことが分かったとしています。顧客を巻き込んで例外を減らし、42工程を9工程に減らしたうえで RPA を導入しました。その結果、受注業務の時間を75%削減したと紹介されています。
この記事で分かるのは、導入前に整理したいばらつき、現状フローから不要な工程と転記を見つける方法、入力形式・判断ルール・完了条件のそろえ方、定型処理と例外の分け方、現場と情シスで1工程を試す進め方です。
RPA 導入前に整理したい、業務の3つのばらつき
RPA は、決まった入力を受け取り、決まったルールで処理し、決まった形で出力する作業を代わりに行います。入力・ルール・出力のどれかがばらついていると、ばらつきのたびに止まります。導入前に整理するのは、この3つのばらつきです。
- 入力形式のばらつき。同じ注文が FAX・メール・紙・Web フォームで届き、項目の書き方も違う状態です。RPA は読み取れる形が決まっていないと動きません。
- 判断のばらつき。「この取引先は特別扱い」「金額によって上長に回す」のような判断が、担当者の頭の中にだけある状態です。ルールを言葉にできない判断は、自動化できません。
- 完了条件のばらつき。何をもって1件が終わりかが人によって違う状態です。完了の定義がないと、RPA が出力した結果を誰も確認しません。
デジタル庁は、自治体の窓口 DX について、業務改革を行わないままシステムの導入だけを進めると、かえって手続が複雑になり、職員側の業務が増える可能性があると説明しています。RPA も同じで、ばらつきを残したまま入れると、RPA を止めて直す作業が増えます。
現状のフローから、不要な工程・重複・転記を見つける
標準化の前に、現状の業務フロー図を描きます。描き方は業務フロー図の作り方、担当者への聞き方は業務ヒアリングの進め方で扱っています。図ができたら、自動化を考える前に、次の3つを探して減らします。
- 不要な工程。誰も見ていない報告書、形だけの確認印など、無くしても結果が変わらない工程です。自動化するより、無くす方が早く安く済みます。
- 重複。同じ内容を2つの帳票に書く、2人が同じ確認をする、といった工程です。1つにまとめます。
- 転記。システム A の画面を見て、システム B に手で打ち直す工程です。転記は RPA が最も得意な作業ですが、転記そのものを無くせる(A から B へ直接連携できる)なら、その方が確実です。
白書の事例では、受注業務の全体像を把握したときに、チェック項目が整備されていないことと、作業者の判断による不規則な業務が重なり、42の工程が「クモの巣のように」発生していたと述べられています。自動化の前に工程の数そのものを減らす、という順番です。
入力形式・判断ルール・完了条件をそろえる
工程を減らした後で、残った工程のばらつきをそろえます。入力形式は、受け付ける形を1つか2つに絞り、それ以外は受け付けた時点で人が所定の形に直す工程を置きます。顧客から届く形を変えてもらえる場合は、顧客に依頼します。
白書の事例では、チェック項目を明確にする中で、顧客との間でルールがないことによる単価の入力ミスなど、顧客に起因する不規則な業務が一定数あることが分かり、顧客を巻き込んで一緒に問題点を抽出し、改善したとしています。社内の工程だけを整理しても、入力の元が顧客にある場合は、顧客との取り決めまで含めて整理する必要があります。
判断ルールは、「何を見て、どう決めるか」を表にします。「金額が10万円以上なら上長の承認」「取引先コードが A から始まるなら専用の帳票」のように、入力の値と結果の対応で書きます。表にできない判断は、人に残します。完了条件は、「システムに登録され、確認者が承認した時点」のように、誰が見ても同じになる形で決めます。

定型処理と例外を分け、人に戻す経路を決める
すべての例外をなくすことはできません。目標は、例外をなくすことではなく、「定型処理」と「人に戻す処理」の境目を決めることです。境目が決まっていれば、RPA は定型処理だけを行い、それ以外を人に渡して止まらずに進みます。
人に戻す経路は、具体的に決めます。「どの条件で」「誰に」「どの手段で(メール・システムの一覧・紙)」「いつまでに処理するか」の4つです。戻した件数は毎週数え、件数が多い条件は、ルールに取り込めないかを検討します。例外の件数が減っていけば、自動化の範囲が広がります。
現場と情シスで、1工程を試す
RPA は、いきなり全工程に入れるのではなく、定型処理と判断した工程の中から1つを選んで試します。選ぶのは、件数が多く、入力がそろっていて、誤りの影響が小さい工程です。試す期間は2週間とし、RPA が止まった回数と理由を記録します。
試す体制は、現場の担当者と情シスの両方で組みます。現場は、入力と結果の確認を担当します。情シスは、RPA の設定の変更と停止を担当します。「誰が止めるか」「止めたとき、誰が手作業に切り替えるか」を先に決めておかないと、止まったときに業務が止まります。
白書の事例では、RPA の導入時に3か月間の導入サポートを受ける間、DX 推進プロジェクトのメンバーが勉強会で RPA を学び、各部署に持ち帰って導入できる内容を検討・検証したとしています。試す工程で得た「止まった理由」の記録が、次の工程を選ぶ材料になります。
自動化できる工程の候補を、現状のフローから探す作業は AI に任せる方法があります。ProcessAI は、担当者が AI と会話した内容(一般的な業務では20〜30分が目安)から業務フロー図の初稿を作り、自動化できる工程の候補と削減時間の試算を出します。候補のうちどれを試すかは、この記事の基準で決めてください。


自動化できる工程の候補を現状のフローから探したい場合は、ProcessAI をご検討ください。担当者が AI と会話するだけで、業務フロー図の初稿と自動化候補、削減時間の試算が出ます。
よくある質問
- 例外が多い業務は RPA に向きませんか。
- 例外の件数と種類によります。例外のうち件数が多いものは、ルールに取り込んで定型処理に含められます。まれな例外は人に戻します。編集部の目安では、例外を除いた定型処理が大半(8割程度)を占めれば、試す価値があります。
- 標準化にどのくらいの期間がかかりますか。
- 1業務について、現状のフロー図の作成に1〜2週間、工程の削減とルールの整理に2〜3週間が目安です。顧客との取り決めが必要な場合は、顧客の都合で長くなります。
- RPA と生成 AI はどう使い分けますか。
- RPA は、入力とルールが決まっている定型処理に向きます。生成 AI は、文章や画像のように形が決まっていない入力を扱う工程に向きます。生成 AI の向き不向きは、生成AIで業務改善を始める前に必要な「現状業務の棚卸し」で扱っています。
出典
ProcessAI
担当者が AI と話すだけで、業務フロー図の初稿ができます
記事で紹介したヒアリングと作図を、AI が音声の会話で行います。一般的な業務では20〜30分の会話が目安です。 業務フロー図の初稿に加えて、自動化できる工程の候補と削減時間の試算が出ます。
- AIどのような部署で、どんなお仕事をされていますか?
- 担当者取引先への見積依頼から発注までを担当しています。
- AI最初は何から始まりますか?
- 担当者仕入先にメールで見積もりを依頼して、届いた見積書の金額と納期を確認します。
- AI確認の後は何をしますか?
- 担当者問題があれば修正を依頼します。問題がなければリーダーに承認を依頼します。
業務フロー図 (初稿)
- 仕入先に見積もりを依頼 (メール)
- 見積書の金額と納期を確認
- ◇ 内容に問題があるか問題あり → 修正を依頼 / 問題なし ↓
- リーダーに承認を依頼
デモ: 見積・発注業務 (架空のデータ)